日本粋薦

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父と晩酌したい徳利お猪口 01

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これで父とお酒を飲んでみたい。

私はお酒がめっぽう弱いです。アルコール消毒すら念のため避けるようにとお医者さんに言われるレベルの弱さなのですが、これを見た時は思わずそう思いました。
本日はこの徳利とお猪口をお伝えします。

笠間焼

笠間焼をご存知ですか?

笠間市茨城県の南北でいうとおよそちょうど真ん中あたり、ちょっとくびれっぽくなってる感じの栃木寄りに位置してます。このイメージが伝わったかどうかわかりませんがだいたいその辺です。
基本的に山ですね。駅から離れれば離れるほど山です。そんな山々の土から作られる焼き物を指して笠間焼と呼びます。たぶん。
関東の焼き物といえばこの笠間焼と栃木県の益子焼が有名なんじゃないでしょうか。
そんな焼き物で有名な笠間にはたくさんの窯元があるのですが、今回私は縁あって三宅陶園という窯にたどり着きました。

三宅陶園

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私はなぜ看板だけ撮って建物を写さなかったのでしょうか。謎です。
走って向かっていたので余裕がなかったんですかね。
惜しいことに写っていませんがこの看板のすぐうしろに焼き物の直売所兼お家があります。
三宅陶園は現在4代目の桂山さんが受け継いでいる工房です。

還元焼成

焼き物には酸化焼成還元焼成と呼ばれる、大きく分けて2種類の焼き方があります。ちなみに桂山さんの作品の多くは後者の還元焼成で作られています。
酸化焼成は十分に酸素がある状態で焼くこと、還元焼成はその逆で酸素が足りないまま、不完全燃焼の状態で焼くことをいうそうです。
なにがどうなってこうなるのか仕組みは説明できませんが、見た目はまるで違います。

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酸化焼成では緑に焼きあがる釉薬(焼く前に土に塗るもの)が還元焼成ではこのように鮮やかな赤に変わるのです。

何よりこの鮮やかな赤に惹かれました。手に持った時にしっくりくる。人の手がつくる温かさを感じます。
赤が綺麗に出ないものも多く、そういったものは売り物にならず割って捨ててしまうそうです。
陶芸家のイメージで頭に浮かぶ「ちがぁぁぁぁぁう!!」(パリーン!)みたいなのも意外と本当なのかも?(桂山さんは決してそういう方ではありません)

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このお猪口は大きすぎず小さすぎず手になじむ大きさです。
透き通った色が気に入り即決しました。
桂山さんも「これはいい」と自器自賛してました。

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裏には桂山さんの名前が入っています。

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こちらは還元焼成で鮮やかな赤になるはずの釉薬がかかっていますがうまく色が出なかったため赤、緑、そして2色が混ざった紫の3色が出ています。
還元焼成としては失敗なのかもしれませんがこの絶妙な色合いが気に入っています。

4代目桂山さん

静かな方でしたが、父と晩酌するための徳利とお猪口が欲しいと伝えると並んでいる作品のことだけでなく焼き物の色々なことを教えてくださいました。
モノによっては24時間~50時間も焼成することがあるそうです。
丸2日以上かけて焼いても窯を開けてみるまで自分でもどんなものが出来上がっているのかわからない。
そこも焼き物の楽しさのひとつだそうです。
売り物になるものは数十個~百個のうち数点しかないこともよくあると聞き、今自分の目の前にあるこの作品の影には何倍、何十倍ものお客さんの目に触れないモノがあるのかと、焼き物の途方もなさを感じました。
色が綺麗に出ても釉薬が台に垂れてくっついて取れなくなってしまっていることもあるそうで、そういう時も泣く泣く割るしかないんだとか……

「損得でやってるとできないよ」

そう笑った桂山さんの顔がとても印象的です。
桂山さんの奥様もとにかく優しい素敵な方でした。いただいたお茶、きゅうりの漬物、よく冷えたトマト、どれもとびきり美味しかったです。


実はモノを作っている人に会いに行って話をしたのはこの三宅陶園が初めてでした。
そもそもいきなり訪ねて行ってつくり手の方に話聞いたりできんのかよ……って思いながらの訪問でしたが結果帰り道の私はほくほく顔でした。
幸運に恵まれ、とても素敵な良いモノ、良い人と出会うことができました。

三宅陶園でのお土産話などをしながら父と晩酌した日のお酒は奇跡的に美味しかったです。